本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

フランコ・カッサーノ 「南の思想」カッサーノへのインタビュー

  わたしが説こうとする「遅さ」は、人生は単なる強迫観念になった競争に支配される必要がないことを思い出させてくれます。この強迫観念になった競争のために、先進国の裕福な人々は貧乏人のように、つねにばたばたして急いでいるのです。
  世界の加速化は、必ずしも世界をよくすることではありません。今日、ゆっくり歩むことが可能になっているのは、多くの近代テクノロジーのおかげでもあります。つまり問題は、それらのテクノロジーをこの目的のために使う意志があるかどうか、ということなのです。速度は重要ですが、もっとも速い恋愛はお金で買える愛で、 もっとも速い教育は知識の消化プロセスの時間を無視して生徒に無数の情報を教え込もうとする教育システムだとすればどうでしょう。これは、不安しか教えることができない無用、あるいは有害な作業でしょう。
  思想も広がりを獲得するためには、アクセルを放すことを学ばなければならないのです。「遅さ」を通じてわれわれは、生産プロセスに対する主権を主張できるようになり、われわれ自身が作った仕組みの単なる付属物になってしまうことを拒否することができるのです。
  以前は10時間をかけて作っていたものを今日では1時間だけで作れるようになったのに、なぜ以前と同じ時間、仕事し続けなければならないでしょうか。なぜ労働時間を削減してその代わりに人生充実の時間を増やしてみることができないでしょうか。

 

ファビオ・ランベッリ 訳