スティーヴン・D・レヴィット スティーヴン・J・ダブナー「ヤバい経済学」第1章
道徳的インセンティブを経済的インセンティブとぶつからせる研究が1970年代に行われた。今度は献血の背後にある動機について調べようとしたのだ。わかったこと: 献血をした人を思いやりがあると単に褒めるかわりに、彼らに少額の奨励金を払うと、献血は減る傾向がある。奨励金で、献血は気高い慈善活動から痛い思いをしてほんの数ドル手に入れる方法に堕落した。そして数ドルではぜんぜん見合わない。
献血者に払われるインセンティブが50ドルならどうだろう?500ドルなら?あるいは5000ドルなら?もちろん献血者の数は大きく違っていたはずだ。
しかし、大きく違うのはそれだけではないだろう。インセンティブには暗黒面がつきものだ。400ccの血に突然5000ドルの値段がついたらたくさんの人がそれに目をつけるのは間違いない。ナイフで人を刺して文字どおり血を強奪する人が出るかもしれない。ブタの血を自分の血だと言って出す人もいるかもしれない。偽造した身分証明書を使って献血量の制限を超えようとするかもしれない。インセンティブが何であれ、置かれた状況がどうであれ、インチキする連中はどんなことをしてでも人を出し抜こうとする。
望月衛 訳