本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

スティーヴン・D・レヴィット スティーヴン・J・ダブナー「超ヤバい経済学」第5章

新しいアイディアの中には、どれだけ便利であろうが、反感を買わずには済まないものがある。すでに書いたように、人間の臓器の市場は——あれば毎年何万人もの命が救われるかもしれないのに——そういう例の一つだ。
時間とともに、そういうアイディアも反感の壁を乗り越えて現実になる。貸したお金で利息を取る。人間の精子卵子を売る。愛する人の早すぎる死で儲ける。最後の例はもちろん生命保険で、あれは結局そういう仕組みだ。今日では、自分が死んでも家族が暮らしていけるように、生命保険を掛けるのが普通になっている。でも19世紀の中ごろまでは、生命保険は「冒涜」だった。社会学者のヴィヴィアナ・ゼリザーはこう書いている。「死という神聖な現象を野卑でありふれたものに変えてしまう」。

望月衛