フェルナンド・ペソア「不安の書」
なぜ芸術は美しいのか?役に立たないからだ。なぜ実生活は醜いのか?すべて目的、目論見、意図だからだ。実生活の道はどれもこれも、ある地点から別の地点へいくためだ。誰も出発しないところから、誰も向かっていかないところへ向かう道があればよいのだが。
野の真ん中に始まり、もうひとつの野の真ん中にいく道を敷設して人生を送れたならばよいのだが。その道は延長されれば役に立つのだが、気高くも、道の半ばまでしか延びない。
廃墟の美しさは?もう何の役にも立たないからだ。
過去が甘美なのは?過去を思い出すことは、それを現在にし、それはそれでもなく、それになりえないので、過去を思い出すのはばかげたこと、きみ、ばかげたことになるからだ。
高橋都彦 訳