本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

フェルナンド・ペソア「不安の書」

  世界の支配はわれわれ自身のうちで始まる。世界を支配する者は誠実な者ではなく、また不誠実な者でもない。人工的で自動的な手段により真の誠実さを自分に作る者だ。その誠実さが彼の力になり、これが他人の虚偽性の低い誠実さを前にして光を放つ。うまく自分を欺くことが政治家に第一に必要とされる性質だ。詩人と哲学者だけにしか世界の現実的見方ができない、なぜなら、彼らだけにしか幻想を持たないことが許されないからだ。はっきり見えると、行動しないことになる。

 

高橋都彦 訳