本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

フェルナンド・ペソア「不安の書」

わたしのもっとも幸せな時間は、何も考えず、何も望まず、夢見ることさえせず、考え違いをしている植物のような、生き物の表面で成長する単なる苔のような非活動状態に浸っているときなのだ。苦しみを感じることもなく、わたしは、死と消滅の前兆は何でもないというばかげた意識を味わう。

 

高橋都彦 訳