ナタリー・バビット「時をさまようタック」
「わしたちのまわりにいるものはなにか、わかるかい、ウィニー。」
「生命だよ。うごいて、成長して、変化して、二分とおなじ姿をしていない。この水も、毎朝、こうして見ればおなじ水に見える。しかし、そう見えるだけでおなじでないんだよ。一晩じゅう、うごいている。西へのびるむこうの小川からながれてきて、こっちの東の小川をとおって出ていくのさ。いつもしずかに、いつもあたらしく、うごいているんだ。ほとんど目に見えないだろう?ときには、風が水のながれをさかさにうごかしているように思うことがあっても、ほんとうはそうじゃない。ながれはいつもそこにあって、水は自分でうごいているんだよ。そして、長い時間をかけて、いつか海にたどりつくのさ。」
「そのとき、なにがおこるか、わかるかい。水に、だよ。太陽は海から水を吸い上げて、雲にはこびかえす。そうすると、雨がふってくる。雨は小川におち、小川はまたながれつづけて、ぜんぶもとのところへかえすのだ。ウィニー、それが車輪なんだよ。みんな、やすみなくまわる車輪なんだよ。カエルもその一部だし、虫も、魚も、ツグミも、そして人間も。みんなおなじところにとどまっていない。あたらしくなり、成長し、変化する。うごきつづけている。そういうことになっているんだ。それが自然な姿なんだよ。」
小野和子 訳