ミヒャエル・エンデ「自由の牢獄」
「生まれてからこれまでというもの、おまえはあれやこれやと決めたときに、理由があると信じていた。しかし、真実のところ、おまえが期待することが本当に起こるかどうかは、一度たりとも予見できなかったのだ。おまえの理由というのは夢か幻想にすぎなかった。あたかも、これらの扉に絵が描かれていて、それがまやかしの指標としておまえをだますようなものだ。人間は盲目だ。人間がなすことは、暗闇の中へとなすのだ。ある者は結婚を祝い、2日後にはすでにやもめになることを知らぬ。またある者は苦悩と苦難がゆえに首をくくろうとするが、富をもたらす知らせがもうすぐ届くことを知らぬ。さらに、ある者は刺客から逃れるため、孤島に渡り、あろうことか、そこでその刺客とばったり出会うのだ。」
田村都志夫 訳