本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

2018-11-22から1日間の記事一覧

フェルナンド・ペソア「不安の書」

あらゆる海を横断した人は自分自身の単調さを横断しただけだ。わたしはすでに誰よりも多くの海を横断した。すでに、地上にある山々よりも多くの山を見た。すでに、存在するよりも多くの町を通り過ぎ、非世界の大きな川は、わたしの観想する視線のもとを絶対…

フェルナンド・ペソア「不安の書」

自分が理解されるのをいつも拒絶した。理解されるとは、身体を売ることだ。本気で自分とはちがうものと見なされ、品位を持ち、飾り気なく人間的に知られていないほうがいい。 高橋都彦 訳

フェルナンド・ペソア「不安の書」

生きるとは別人になるということだ。もしも今日、昨日感じたように感じるなら、感じることすらできないということだ。昨日と同じことを今日感じるなら、それは感じるのではない——昨日感じたことを今日思い出すのであり、昨日命を失った者が今日生きた死体に…

フェルナンド・ペソア「不安の書」

自分は他人と調和できずに暮らしていると深く感じさせるものは、思うに、大部分の人は感性で考え、わたしは思考で感じるということだ。 月並な人間にとっては、感じるのが生きることであり、考えるのは生き方を知ることだ。わたしにとっては、考えるのが生き…

フェルナンド・ペソア「不安の書」

わたしのもっとも幸せな時間は、何も考えず、何も望まず、夢見ることさえせず、考え違いをしている植物のような、生き物の表面で成長する単なる苔のような非活動状態に浸っているときなのだ。苦しみを感じることもなく、わたしは、死と消滅の前兆は何でもな…

フェルナンド・ペソア「不安の書」

夢が現実を凌いでいるからといって、夢想家が活動的な人よりも優れているのではない。夢想家が優れているのは、夢見ることは生きることよりもはるかに実用的であり、夢想家は行動家よりも生活からはるかに広く、はるかに多様な悦びを引き出すからなのだ。さ…