トルストイ「トルストイの言葉」
ふくろうは闇の中では目が見えるが、太陽の光のみなぎっている場所では盲目にひとしい。学者にもこれと同じような現象が見られる。彼らは不必要な学術上の些事なら知っているが、人生にとって最も必要なこと——つまり、われわれはこの世をいかに生きなければならないかという問題——についてはなにも知らないし、また知ることはできないのである。
多くの本を読み、そこに書いてあることをことごとく信じるよりは、むしろ一冊の本も読まないほうがいい。本を一冊も読まなくても、人間は賢くなれる。本に書いてあることを、そのまま頭から信じるならば、人間は馬鹿になるよりほかはない。
(人生の道)
小沼文彦 訳編