本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

フェルナンド・ペソア「不安の書」

  それが存在するからこそ、ないものを愛する人と、それが存在しないからこそ、あるものを愛する人との間で、裁定も勝利もない戦いがこの世では永遠に行なわれるだろう。それが死を免れないからこそ死を免れないものを嫌う人と、それが死なないのを望むからこそ死を免れないものを愛する人との間にいつも、いつも深い溝があるだろう。

 

高橋都彦 訳