マルサス「人口論」第5章
人口の増加がそれに見合う食糧の増加を伴わずに進めば、各人の特許証の価値を減少させるのと、明らかに同じことになる。分配される食糧は必然的に量が少なくならざるをえず、したがって、一日の労働で買える食品の量も少なくなる。食品価格の高騰が起きる。それは、人口増加の速度が食糧の増加を上回るせいか、もしくは、社会における貨幣の配分の変化のせいである。昔から人のいる地方の食糧は、増加するとしても、ゆったりと規則的にしか増えず、突然の需要には応えることができない。一方、社会における貨幣の配分に変動が生じるのは稀なことではなく、それが食品価格にみられる連続的な変動をひきおこす原因になっていることは疑いない。
*特許証→貨幣のことを指している
斉藤悦則 訳