本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ラッセル「幸福論」第11章

人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。かりに、一つを失っても、もう一つに頼ることができるからである。ありとあらゆることに興味を持つには、人生は短すぎる。けれども、日々を満たすに足りるだけ多くのものに興味を持つのは、結構なことだ。私たちはみんな、内向的な人間の病気にかかりやすい。内向的な人間は、世界の多彩なスペクタクルが目前に繰り広げられているのに、目をそらして、心中の虚無のみを見つめるのである。しかし、内向的な人間の不幸に何かすばらしいものがある、などと想像しないことにしよう。

 

安藤貞雄 訳