サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
「じぶんのものにしてしまったことでなけりゃ、なんにもわかりゃしないよ。人間ってやつぁ、いまじゃ、もう、なにもわかるひまがないんだ。あきんどの店で、できあいの品物を買ってるんだがね。友だちを売りものにしているあきんどなんて、ありゃしないんだから、人間のやつ、いまじゃ、友だちなんか持ってやしないんだ。あんたが友だちがほしいんなら、おれと仲よくするんだな」
「でも、どうしたらいいの?」と、王子さまがいいました。
キツネが答えました。
「しんぼうが大事だよ。最初は、おれからすこしはなれて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目でみる。あんたは、なんにもいわない。それも、ことばってやつが、勘ちがいのもとだからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだん近いところへきて、すわれるようになるんだ……」
内藤濯 訳