本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

トマ・ピケティ 「21世紀の資本」第I部 所得と資本

第1章 所得と産出
  まとめると、国際レベルでも国内レベルでも、収斂の主要なメカニズムは歴史体験から見て、知識の普及だ。言い換えると、貧困国が富裕国に追いつくのは、それが同水準の技術ノウハウや技能や教育を実現するからであって、富裕国の持ち物になることで追いつくのではない。知識の普及は天から降ってくる恩恵とはちがう。それは国際的な開放性と貿易により加速される(自給自足は技術移転を後押ししない)。何よりも、知識の普及はその国が制度と資金繰りを動員し、人々の教育や訓練への大規模投資を奨励して、各種の経済アクターがあてにできるような、安定した法的枠組みを保証するようにできるかどうかにかかっている。だからこれは、正当性のある効率よい政府が実現できるかどうかと密接に関連しているのだ。簡単に言うと、これが世界の成長と国際的な格差について歴史が教えてくれる主要な教訓となる。

 

山形浩生 守岡桜 森本正史 訳