本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

トマ・ピケティ 「21世紀の資本」第III部 格差の構造

第7章 格差と集中
  実際に所得格差を比較すると、最初に気づく規則性は、資本の格差が、労働所得の格差よりも常に大きいということだ。資本所有権(そして資本所得)の分配は、常に労働所得の分配よりも集中している。
  この規則性はデータが入手可能なあらゆる国のあらゆる時代に例外なく見られ、しかもその現れ方は常に相当強烈だということだ。その差がいかに大きいかをざっとつかんでもらうと、労働所得分布の上位10パーセントが、通常は全労働所得の25-30パーセントを稼いでいるのに対し、資本所得分布の上位10パーセントは、常にすべての富の50パーセント以上(社会によっては90パーセント以上)を所有している。おそらくさらに驚くべきこととして、賃金分布の下位50パーセントは全労働者のかなりの部分をもらっているのに対し、富の分布の下位50パーセントが所有しているものは、まったくのゼロか微々たるものだ。労働所得の格差は通常穏やかで小さく、ほとんど妥当とさえ言える。これに比べて、資本に関する格差は常に極端だ。

 

山形浩生 守岡桜 森本正史 訳