本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

サン=テグジュペリ 「人間の土地」人間

  つまり、ぼくらは解放されたいのだ。つるはしをひと打ち打ちこむ者は、自分のそのつるはしのひと打ちに、一つの意味があることを知りたく願う。しかも徒刑囚を侮辱する徒刑囚のつるはしのひと打ちは、探検者を偉大ならしむる探検者のつるはしひと打ちとは、全然別ものだ。つるはしの打ちこまれる所に、必ずしも徒刑場が存在するわけではない。行為の中に醜さがあるのではない。それを打ちこむ者を、人間の共同体に結びつけもしなければ、また意味をもなさないつるはしが打ちこまれる所にこそ、徒刑場は存在するのだ。

  しかもぼくらは、そのような徒刑場からのがれたい念願の者だ。

 

  たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが、自分たちの役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる、そのときはじめて、ぼくらは平和に生き、平和に死ぬことができる、なぜかというに、生命に意味を与える者は、また死にも意味を与えるはずだから。

 

堀口大学