本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

トーベ・ヤンソン「彫刻家の娘」

  幻想の人たちが霧のようにぼんやりして消えてしまうときには、いつも悲しい気持ちになる。ちゃんと物語を組みたてようとしても、やっぱり影も形もなくなってしまう。そうなると語りつづけてもむだだ。ますますばかばかしくなり、よけいにひとりぼっちになるだけだ。

 

冨原眞弓 訳