本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

トルストイ「トルストイの言葉」

  自分の手を使って働かない限り、健康な肉体に恵まれることはない。また健全な思想も頭にわくものではない。          

 

  自分では働くことをせず、他人の労働によって生活している金持どもはすべて、たとえ彼らがどのように自称していても、彼らが自分で働かないで他人の労働を強奪している限り、そうした人間はひとり残らず、強盗である。そしてこの強盗には三種類ある。つまり、自分たちが強盗であることに気づかないで、あるいは気づこうとしないで、自分の兄弟たちに平然として強盗を働いている連中。つぎに、自分たちが間違っていることに気づきながらも、自分たちが軍人として、あるいは各種の役人として勤務していることで、または他人を教え、本を書き、書物を出版していることで、自分たちの強盗行為を正当化することができるかのように考えて、依然として強盗をつづけている連中。それから、自分たちの罪を知っていて、この罪からなんとかして抜け出そうと努力している人たちである。

                                                                                                          (人生の道)

小沼文彦 訳編