老子訳注
太上は、下之有るを知るのみ、
其の次は親しみて之を誉め、
其の次は之を畏れ、
其の次は之を侮り、
信足らざれば、
信ぜられざること有り。
悠かなる兮、其れ言を貴び、
功成り事遂げて、
百姓皆謂う、「我は自然なり」と。
もっともよい支配者、人びとはその存在を知っているだけである。そのつぎの支配者、人びとはかれに親しみ、称賛する。さらにそのつぎの支配者、人びとはかれをおそれる。いちばん後の支配者、人びとはかれを軽蔑する。信任するに値しないからこそ、信任されないという事態がおこるのだ。(もっともよい支配者は)かくもゆったりしていることよ、かれはほとんど命令せず、事がすっかりうまくいくと、人びとはこぞって言う、「われわれは本来こうなるのだ」と。
坂出祥伸・武田秀夫 訳