老子訳注
天下皆美の美たるを知る、
斯れ悪なり矣。
皆善の善たるを知る、
斯れ不善なり矣。
故に
有無相生じ、
難易相成り、
長短相形れ、
高下相傾き、
音声相和し、
前後相随う。
天下の人びとはみな、どのようであれば美しいとされるかを知り、そこに醜いということが生じた。どのようであれば善だとされるかを知り、そこに悪ということが生じた。それゆえ有と無とはたがいに対立しながら生じ、難と易とはたがいに対立しながら発展し、長と短とはたがいに対立しながら形づくられ、高と下とはたがいに対立しながら存在し、音と声とはたがいに対立しながら調和し、前と後とはたがいに対立しながらあらわれる。
坂出祥伸・武田秀夫 訳