フェルナンド・ペソア「不安の書」
死は解放だ、なぜなら、死ぬのは他人を必要としないからだ。哀れな奴隷は喜びや悲しみや望ましい持続する生活から否応なしに解放される。王は離れがたい領地から解放される。愛を広めた女たちは好んだ勝利から解放される。征服した者たちは自分の人生を運命づけた勝利から解放される。
したがって、死は哀れなばかげた身体を高貴にし、見知らぬ晴れ着をまとわせる。そう望まないとしても死んでこそ自由になる。泣きながら従属生活を失うとしても、死んでこそ奴隷でなくなる。王という名が最大の壮麗さである王として、人間としては笑われるにしても、王としては優れている者がこうして死ぬと醜くなるが、それでも死が彼を解放したので優れている。
高橋都彦 訳