フェルナンド・ペソア「不安の書」
地球全体を歩きまわった旅行者は五千マイル先にゆこうとも目新しさを感じない。なぜなら、ただ新しいものを見つけるだけだからだ。毎度、目新しさ、つまり永遠に新しいことの古さを見つけるのだが、目新しさという抽象的な概念は二度目の具体的な経験とともに海の底に沈んでいる。
真の知恵さえあれば、人間は読み方も知らず誰とも話すことなく、ただ感覚を働かせ、悲しみを知らない魂によって、椅子に座ったまま世界の全光景を娯しむことができる。
高橋都彦 訳
地球全体を歩きまわった旅行者は五千マイル先にゆこうとも目新しさを感じない。なぜなら、ただ新しいものを見つけるだけだからだ。毎度、目新しさ、つまり永遠に新しいことの古さを見つけるのだが、目新しさという抽象的な概念は二度目の具体的な経験とともに海の底に沈んでいる。
真の知恵さえあれば、人間は読み方も知らず誰とも話すことなく、ただ感覚を働かせ、悲しみを知らない魂によって、椅子に座ったまま世界の全光景を娯しむことができる。
高橋都彦 訳