本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

フェルナンド・ペソア「不安の書」

  希望がなければ生きられないという人がいるし、また希望を持つと生きるのは虚しいという人もいる。今日期待も絶望もしないわたしにとって、生きることは、わたしを包み込む単なる外枠に過ぎず、わたしはそれを、目を娯しませるためだけに作られた粗筋のない見世物——脈絡のない舞踏、風に揺れる葉、日の光に色彩を変える雲、旧市街の雑多な区域にでたらめに走る旧い街並——のように見る。

 

高橋都彦 訳