本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

フェルナンド・ペソア「不安の書」

  わたしは自分が何を望むのか、あるいは何を望まないのかが分からない。もはや望み方も分からず、人がどのように望むのかさえ分からなくなり、通常、自分たちが望んでいるということや、望みたいと望んでいるということを知るための感動や思考さえ分からなくなった。わたしは自分が誰なのか、あるいは自分が何なのかが分からない。崩れた塀の下に埋まった誰かのように、わたしは倒れた宇宙全体の空虚のもとに横たわっている。こうして、わたしは夜になるまで、異質に感じられる愛撫が、わたし自身への苛立ちとともに、微風のように漂い始めるまで、自分の後をたどっていくのだ。

 

高橋都彦 訳