本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

フェルナンド・ペソア「不安の書」

  漠然とした不安により影に縛りつけられた、失われた怠惰な言葉、行き当たりばったりの隠喩……。どこの並木道で過ごしたのか分からないが、より娯しい時間の名残……。灯火は消え、消えた明かりの思い出のなかでその黄金色が闇に輝く……。無限に向かって立つ目に見えない樹から落ちた枯葉のように、言葉が力ない指から滑り落ち、風に舞うでもなく地面に落ちる……。他人の農園にある池が懐かしく……。けっして起きなかったことに対する郷愁……。

 

高橋都彦 訳