本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ダニエル・コーエン「経済成長という呪い」結論

  そうはいっても、かつての農村社会がカロリーに飢えていたように、現代社会は富に飢え続けている。決してたどり着けない地平線に向かって歩き続ける人のように、現代社会は絶えずもっと裕福になりたいのだ。だが、いったんその裕福さを手に入れると、それが当たり前の状態になり、現代人はまたしてもそこから遠ざかろうとする。そうなるのを人間はわかっていない。なぜ人間は、常に自己を自分自身から無理やり引き離そうとするのだろうか。精神分析医、人類学者、経済学者は、この不可解な問いに迫ろうとし、さまざまな見解を提示した。いずれにせよ、重要な点は次のようにまとめられるだろう。人間の欲望は、その人が身を置く状況から多大な影響を受ける。こうして人間は、飽くなき無限の欲望を抱くことになる……。

 

林昌宏 訳