本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ダニエル・コーエン「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」第14章

金融市場の場合では、行動様式を均質化させることが規律になっていた。すべての金融関係者がまったく同じことをやろうとしたのだ。信用金庫は銀行になろうとした。商業銀行は投資銀行になろうとした。投資銀行は投機を行なうヘッジファンドになろうとした。採用する戦略が正しいのかを、外部から判断できる者はいなくなった。そして全員が、同時期に、同じ疾病で息を引き取った。
われわれはそうした状況にあるのだ。今後、資本主義は、ほかのすべてに代わる文明になるが、その正当性が外部から判断されることはない。経済と文化の相互接続が規律になったので、全体の機能不全というリスク回避に、全員がさらされるようになったのである。

林昌宏 訳


*生態系が多様性を失うと致命的な危機となるように、金融市場においても行動の多様性の欠如がリスクの増加に繋がり、金融危機を招いたと指摘している。