本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ダニエル・コーエン「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」第9章

経済成長は、政府の財源を膨張させるだけではなく、個人の私的な幸せにも影響をおよぼす。1975年のフランス人は、1945年のフランス人よりも比較にならないほど裕福だが、彼らがより幸せだったというわけではない。なぜだろうか?その答えは単純だ。現代の幸せは、実現した経済的な豊かさのレベルに比例するのではなく、経済的な豊かさの出発点がどこであろうと、その増加レベルに比例するからである。

現代社会は、経済的な豊かさよりも、経済成長に飢えているのだ。(すでに)経済的に豊かであるが停滞している国よりも、(急速に)経済的に豊かになる貧しい国で暮らすほうが幸せなのだ。

林昌宏 訳