本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ダニエル・コーエン「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」第6章

奇妙なパラドックスが、くっきりと浮かぶ上がってきた。高度経済成長により、人々は世代間の絆を持続できると信じるようになった。福祉国家がつくりだした財政面の連帯は、家族と置き換わっていった。というのは、人々はマネーの面で独立するようになると、親の面倒をみないようになったからだ。ところが、経済成長が減速すると、福祉国家がつくりだした連帯の連鎖は弱まってしまったのだ。このようにして人々は、すべてを失った。家族の絆は崩壊し、福祉国家は財政上の重圧になったのである。

林昌宏 訳


*年金システムは経済が急成長する間は圧倒的に承認されるが、減速した場合困難になる。しかし元々家族の世代間で結ばれていた絆は、国家の財政によって結ばれる絆(=年金システム)に取って代わられており、どちらにも頼ることが難しくなってしまったということ。