本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ダニエル・コーエン「経済は、人類を幸せにできるのか?」まえがき

  獲得してもすぐに失われてしまう“幸せ”という目的を、絶えず課してくる社会のパラドックスを、どのように理解すればよいのだろうか。その答えはすぐに浮かんでくる。すなわち、人類はあらゆることに慣れてしまうので、幸せになれないのだ。いかなる進歩を達成しようとも、それらはすぐに日常の出来事になってしまう。幸せは常に、純白のページの上に描かれるのだ。ところが、人類はそのような適応力に気づかないために、人類の幸せを願う夢は、けっして満たされることがないのである。

 

林昌宏 訳