本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ミヒャエル・エンデ「遠い旅路の目的地」

「そうして、人はなんでも見つけた。太古の怪獣や獣人の骨なども——なぜだと思いなさる。それをさがしたからじゃ。そうしてこの世界全体を造り上げた。少しずつ造り上げたのじゃ。そして人は、神が世界を造りたもうた、と言っている。しかし、この世界がどんな具合か見てごらんなされ。ごまかしや矛盾がひしめき、酷いことや暴力であふれ、強欲や、大小の、意味もない苦しみでいっぱいじゃ。そこでおまえさまに尋ねるが、公正で崇高だと人の言う神が、どうしてこのような不完全なものを、造りたもうたのじゃ?人間こそが創造主なのだが、人はそれを知らぬ。知りたくもないのじゃろう。自分で自分がおそろしいからな。」

 

田村都志夫 訳