本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

リルケ「若き詩人への手紙」

孤独が大きなものであることに気づかれたならば、それをお喜び下さい。なぜなら(そうあなたは自問なさって下さい)偉大さを持たない孤独とは何ものであろうか、と。孤独はただ一つあるきりで、それは偉大で、容易ににない得られないものです。そしてほとんどすべての人にとって、その孤独をできるものならなんらかの、どんな月並みな安価な付合いとでもいいから交換したいと望むような時期がくるものです……しかしそれこそおそらく孤独が成長する時なのです。 なぜなら、その成長は少年のように苦痛を伴い、春の初めのようにものがなしいものです。しかしそれであなたがまどわされてはなりません。必要なことはしかし結局これだけです、孤独、偉大な内面的孤独。自己自身の中へはいり、何時間も誰にも会わないこと、——これは誰にも成し遂げ得るはずのものです。子供の時、大人の人がさも大事そうな、大へんなことのように見える物事に——しかしそれは大人が忙しそうに見え、子供は大人のすることを何一つ理解することができなかったからにすぎないのですが——かかわり合って右往左往する時に、孤独であったような、そのような孤独。

 

高安国世 訳