バルザック「ゴリオ爺さん」
青年というものはだれでも一定の法則にしたがって生きるものだ。その法則は一見不可解のように見えるが、じつは若さそれ自体や、青年たちが快楽に向かって突進する狂熱的な激しさに由来するものにほかならない。貧富を問わず、青年は、生活に必要な金にはいつも事欠いているくせに、遊びのための金ならいつだって持っている。掛けで買えるものにはいたって気前がいいが、現金払いのものにはひどくけちけちしている。まるで、手に入れうるものを無駄に費やすことによって、手に入らないものへの復讐をしているように見える。
高山鉄男 訳