ストリックランド夫人は、生まれつき同情心に満ち溢れていた。この種の性質は魅力的ではある。が、人は、自分に同情心があるのだと気づくと、ついつい過剰にそれを使ってしまうものでもある。
なぜそんな言い方をするかといえば、彼らが友人の不幸に対して、手際のよさを見せつけようとやっきになるありさまが、屍をあさる鬼が飢えと渇きを満たそうとしている様子に似ているからなのだ。
同情が油田のように噴出し、とめどもなく降り注ぐので、時としてその犠牲者は迷惑に感じさえする。そんなにも涙を降り注いでもらった心に、私ごときがさらに同情して何になると思わせるのだ。
大岡玲 訳