本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

サマセット・モーム「人間の絆」

時々、彼は、人と一緒にいるのが、たまらなく不安になり、強く孤独を欲することがある。そんな時は、彼は、ひとり郊外へ散歩に出るのだったが、そこには、緑の野をわけて、小川が一筋流れており、両側には、刈り込まれた木立がずっと並んでいる。その堤を歩いていると、彼は、なぜかしらぬが、幸福だった。

 

中野好夫 訳