本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

レイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」第2章

  宇宙の誕生から生命体の進化が最初の一歩をふみだす(原始細胞、DNA)までに何十億年とかかったが、その後の進歩は加速化されている。カンブリア紀の大爆発の時代には、主要なパラダイム・シフトは、ほんの数万年ごとに起こっている。時が下り、数百万年の間に原人、旧人などヒト科の進化が進み、ほんの数十万年を経てホモ・サピエンスが出現した。テクノロジーを創造する種が出現すると、指数関数的なペースが急速に高まり、DNAがタンパク質の合成を指示するという形での進歩では追いつかなくなり、進化の主役は、人間が作りだしたテクノロジーに交代した。だからといって生物の(遺伝的な)進化が続いていないわけではないが、秩序を向上させる(あるいはコンピューティングの有効性と効率性を高める)という点で、進化を先導する立場にもはやない。
  前の章で述べたように、新しいパラダイムの全体としての採用率は、テクノロジーの進歩率と並行して上昇しており、現在のところ、10年ごとに2倍になっている。つまり、新しいパラダイムを採用するまでの時間が、10年ごとに半分になっているということだ。この率でいけば、21世紀のテクノロジーの進歩は、200世紀分の進歩に相当する(線形的展望)ということになる(西暦2000年の進歩率での計算)。

小野木明恵

 

パラダイム・シフト →ものごとを遂行するための手法や知的プロセスにおける大きな変化のこと。
パラダイムの発展は三段階に分かれる。
1、 遅い成長 (指数関数的成長の初期段階)
2、急速な成長 (指数関数的成長の後期にくる爆発的な段階)
3、ひとつのパラダイムの成熟に伴い、発展が横ばいになる。この段階では、次のパラダイム・シフトに向けた圧力が増す。テクノロジーの例であれば、次のパラダイムを創造するための研究費用が投資される。

  このサイクルが繰り返され、パラダイム・シフトの間隔はますます短くなり、指数関数的成長を続ける。生物進化のプロセスも、テクノロジー進化のプロセスも、同様のサイクルをたどり、指数関数的成長が続くことを、カーツワイルは指摘している。