本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

レイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」第4章

  わたしの考えでは、アップロードのもっとも重要な点は、われわれの知能や個性や技能を、非生物的な知能へと、徐々に移し換えることだ。すでに、多様な人工神経装置の移植が実践されている。2020年代には、ナノロボットを使って、非生物的な知能で脳を増強させるようになる。まずは、感覚処理や記憶といった「定常的」な機能に始まり、技能の形成、パターン認識、論理的分析に進んでいく。2030年代には、われわれの知能の中に占める非生物的部分の割合が優勢になり、2040年代には、第3章で述べたように、非生物的な部分の性能のほうが何十億倍も高くなる。ある程度の間は生物的な部分を保持しようとするかもしれないが、そのうちに、それはたいして重要なことではなくなる。そういうわけで、われわれは事実上アップロードされた人間になる。たとえその過程が徐々に進み、移管にほとんど気づかなかったとしても。

 

小野木明恵 訳