本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

レイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」第6章

  歴史上、人間が寿命という限界を超えて生き続ける唯一の手だては、その価値観や信仰や知識を将来の世代に伝えることだった。今、われわれは存在の基盤となるパターンのストックが保存できるようになるという意味で、パラダイム・シフトを迎えつつある。人間の平均寿命は着実に伸びており、やがてその伸長はさらに加速するだろう。現在、生命と病の根底にある情報プロセスのリバースエンジニアリングが始まったところだ。ロバート・フレイタスは、老化や病気のうち、医学的に予防可能な症状の50パーセントを実際に予防すれば、平均寿命は150年を超えるだろうと予測する。さらに、そういった問題の90パーセントを予防すれば、平均寿命は500年を超える。99パーセントならば、1000年以上生きることになるだろう。バイオテクノロジーとナノテクノロジーの革命が完全に現実のものになれば、実質的にはあらゆる医学的原因による死をなくすことができると予想される。非生物的存在になっていくにつれて、われわれは「自分をバックアップする」(知識、技能、性格の基本をなす重要なパターンを貯蔵しておく)方法を手に入れ、たいていの死因は取り除けるようになるだろう。

 

野中香方子 訳