本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

レイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」第6章

  バージョン3.0の人体は意のままに異なる形状へ変わることができ、大半が非生物となったわれわれの脳は、もはや生物としての限られた構造に縛られることはない。そうなると、人間とはなにかということが徹底的に問われるようになるだろう。ここに述べた個々の変化は一足飛びに起きるのではなく、一歩ずつ小さな歩みが続いた末にもたらされる。そうした歩みはせきたてられるようにして進んでいくが、一般に受け入れられるのもまた急速である。体外受精のような新しい生殖技術について考えてみればよくわかる。最初は論争の的になったものの、たちまち広く利用され容認されるようになった。その一方で、変化はつねに原理主義者とラッダイトの反動を呼び起こし、それは変化の速度が増すにつれていっそう激しくなる。しかし、見た目は論争を呼んだとしても、人類の健康、富、表現力、創造性、そして知識にとって、圧倒的な利益をもたらすものであることはたちどころに明らかになる。

 

野中香方子 訳