本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ルソー「エミール」第1編

そしてわたしはさらに、生徒と教師は、その運命がいつも一体となっているくらいに、おたがいに別れられないものと考えるようになることを望みたい。先になると別れることがわかってくると、おたがいに他人になる時期が見えてくると、かれらはすでに他人なのだ。二人ともそれぞれの狭い世界にとじこもり、一緒にいなくなるときのことばかり考えて、一緒にいるのはいやいやながらということになる。弟子は先生をただ、子ども時代のしるしであり、やっかいなものであるかのように考える。先生は弟子をただ、はやく肩からおろしてしまいたい重荷のように考える。かれらはいずれも、おたがいにやっかいばらいをする時を待ちこがれる。そして二人のあいだにはほんとうの結びつきというものはまったく見られなくなるので、一方は監督を怠り、他方はいうことをよくきかない、ということになる。

 

今野一雄 訳