ルソー「エミール」第4編
虚栄心のつよい人たちは富をみせびらかそうとして、利益をもとめる人たちはその恩恵にあずかろうとして、きそって金をつかい、つかわせる新しい方法をさがしている。そこで大がかりなぜいたくが支配権を確立し、手に入れることの困難な、高価なものを好ませる。そうなると、いわゆる美しいものは、自然を模写するどころではなく、自然に反することによってのみ美しいとされる。こんなわけで、ぜいたくと悪趣味はかならず結びついているのだ。趣味に金がかかるばあいには、それはいつもまちがった趣味なのだ。
今野一雄 訳