本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

星野道夫 「ノーザンライツ」

  混沌とした時代の中で、人間が抱えるさまざまな問題をつきつめてゆくと、私たちはある無力感におそわれる。それは正しいひとつの答が見つからないからである。が、こうも思うのだ。正しい答など初めから存在しないのだと……。そう考えると少しホッとする。正しい答をださなくてもよいというのは、なぜかホッとするものだ。しかし、正しい答は見つからなくとも、その時代、時代で、より良い方向を模索してゆく責任はあるのだ。時代の渦にまきこまれながらも、何とか舵をとりながら進んでゆこうとするグッチンインディアンの人々の夢に、ぼくは強くそのことを感じていた。