本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」

(どうしてぼくはこんなにかなしいのだろう。ぼくはもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこに岸のずうっと向こうにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。ぼくはあれをよく見てこころもちをしずめるんだ。)
  ジョバンニはほてって痛いあたまを両手で押えるようにしてそっちの方を見ました。
(ああほんとうにどこまでもどこまでもぼくといっしょに行くひとはないだろうか。カムパネルラだってあんな女の子とおもしろそうにはなしているし、ぼくはほんとうにつらいなあ。)
  ジョバンニの目はまた涙でいっぱいになり天の川もまるで遠くへ行ったようにぼんやりと白く見えるだけでした。