本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

シモーヌ・ヴェイユ 「重力と恩寵」愛

  眼のまえに、全世界を、全生命を所有していることを忘れるな。おまえにとっての生命は、ほかのいかなる人間にとってよりも、実在的で、充溢し、晴朗たりうるし、また、そうあらねばならない。いかなる放棄によってもあらかじめ生命の十全性をそこなうな。いかなる情愛によっても自己を牢獄につなぐな。おまえの孤独を守りぬけ。いつの日か、そんな日が来るならの話だが、真の友情が与えられるとき、内面の孤独と友情との対立はもはや存在するまい。逆に、この不謬の徴によってこそ友情は識別可能となる。その他の情愛は激しく制御されねばならない。

 

冨原真弓 訳