本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

エマニュエル・トッド 「問題は英国ではない、EUなのだ」

  こうして、好きとか嫌いとか、良いとか悪いとかいったア・プリオリな思い入れから自由な観察者でいるとき、表面的には複雑きわまる歴史的現実の中に非常に単純な一種の法則のようなものが見えてくることがあるのです。
  私がこれは実際そうに違いないと見抜いた気がしたのは、「集団的な信仰としての宗教という現象が消失してしばらくすると大きな危機が到来し、極端なイデオロギーが生まれてくる」ということでした。そのイデオロギーは、もはやいわゆる宗教ではなく、世俗的なもの、しばしば国粋主義的なものですが、巨大な集団を動かす力を持っています。しかも、この現象はかなり自動的に、その時々の経済的状況と無関係に起こるのです。今日人々は大きな世界的危機をしばしば経済だけで説明しようとする傾向がありますが、私の見方はそれとは違うわけです。

 

堀茂樹 訳