本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

アダム・スミス 「国富論」第一編第十章

  つまらない仕事では、労働の楽しみはもっぱら労働の報酬にある。その楽しみを最もはやく受け取れる状態にある人は、それを味わうことに最もはやく思いをめぐらし、そしてまた、勤勉の習慣をはやく身につけがちである。若い人は、長いあいだその労働からなんの利益も受けないときには、労働に嫌悪の情をいだくのが自然である。公共の慈善団体の手で徒弟に出される少年は、一般に、通常の年数以上の義務を負う。そこでかれらは、たいへん怠惰で役に立たない者になるのが普通である。

 

大河内一男 責任編集