本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

グスターボ・アドルフォ・ベッケル 「ベッケル詩集」15

  青い水平線が
遠い彼方にかすむのを
黄金のゆらめく粉々のベールを
透かして見つめている時、
惨めな地べたから駆け上がり
あの黄金の霧とともに
漂えそうに僕には思える、
軽々とした粒子となって
霧のように形をなくして!

 

  夜 暗い天の底に
星たちが
燃えたつ火の瞳のように
揺れているのを見つめている時、
ひと翔びであの星たちのきらめくところに昇り、
その光のなかに身を沈め、
そして星たちとともに
燃えあがる焔のなか
口づけをかわし、この身を溶かせそうに僕には思える。

 

  僕は懐疑の海を漕ぎ進み
自分の信ずるものすら知らずにいる。
だが、しかし、この熱い思いが僕に告げる。
汚れなき何ものかを
ここに  内に  僕は持っては、いるのだ、と。

 

山田眞史 訳