ベール・ラーゲルクヴィスト 「現代詩集Ⅳ」新潮社より
杖はわれらの手から……
杖はわれらの手から落ちるだろう
さすらいの旅も終るのだ
人間の土地は荒れはてて横たわり
もはや何物もそこには起らぬだろう
ひとりの人間も遠くを眺めず
ひとりの若者も目ざめぬだろう
ひとりの巡礼も固い臥床の上で
彼の心の条幅を味わうことはないだろう
ここに生きていた若者たちは、去ってしまった
無言で彼らはこの土地から出発していった
——誰ひとり振り返りさえもしなかった
星たちはまだ永遠の中で燃えている
なおも無窮の時間の中で
おぼろな天の川の影が
虚空をぬけて歩んで行く
すべては昔の通り——ただわれらがもはやいないだけだ
われらの陣営の火は消えてしまったのだ
山室静 訳