本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ナンシー・ウッド 「今日は死ぬのにもってこいの日」

たくさんの冬を
わたしは生きてきた、
終わりない夏と戯れ、疲れきった大地を
最初の雪が降ってきて覆いつくした
時のそもそもの始まりから。
たくさんの冬
わたしは山々の頂きに水を捕らえて放さなかった、
月と太陽がみごとな円環を創り出した大地の始まり以来
まだ冷めやらぬ山々の頂きに。
たくさんの冬
わたしは星たちを至るところに吹き飛ばした、
それぞれの星が落ちてゆく先を
冬の陽の路に沿って
海へと川が流れてゆくように。
たくさんの冬
木々はわたしとともに寝た、
獣たちはわたしの胸の上を歩きまわり
鳥たちも夜寒の辛さを和らげようと
わたしの火のそばに近づいてきた。

大地だけが生き続ける。
自分の人生がわからなくなったり
自分がなぜ人に聞き入れられないのか、わからなくなったとき
わたしが話しかけるのはいつも大地だ。
すると大地は答えてくれる、
かつてわたしの先祖たちが
悲しみの涙で太陽が見えなくなったとき
彼らに歌ってやったのと同じ歌で。
大地は歌う、歓喜の歌を。
大地は歌う、称賛の歌を。
大地は身を起こして、わたしを嗤う、
春が冬に始まり、死が誕生によって始まることを
わたしがうっかり忘れるたびに

金関寿男 訳